自分に勝ったマラソン大会
運動会が終わり一週間。体力の回復を待って、マラソン練習が始まりました。
先週のコース試走では、子供と一緒に1.2kmコースを走ってみました。
ほぼ平坦なコースです。校舎と森の間の草むらは、ややアップダウンがあり、ワイルドな感覚を楽しめます。
先頭の6年生は、しっかりとした足取りで、1km5分ペースでも後をついてきました。
すれ違う子供たちに、「ナイスラン!」「マイペースでいいよ」と声をかけます。
後半はバテ気味になったところで担任の先生が伴走する場面も見られましたが、
自分のペースを守って全員が完走しました。
1年生は初挑戦。
走る距離は全員同じですが、経験値が違いますから、はじめはペース配分がよくわからないものです。
そして、闇雲に回数を練習させるだけでは、苦手意識がある子は走るのが嫌いになってしまいます。
マラソンランナーを育てるわけではないので、限られた授業時間の中で、適切な負荷で楽しく、効率よく体力アップが実感できる工夫が必要です。
その小さな工夫の一つは、スタート前にどんな準備をしたら良いか体験させることです。
練習の終わりに、スタート前の心構えについて伝えました。
「30mとか短い距離をダッシュすると心拍が上がって、楽にスタートできます。試してみてください。」
そして、7月9日、迎えた本番。
朝の雨上がり、気温はそれほど高くなく、ランニング日和になりました。
保護者・地域の方々が応援に駆けつけてくださいました。
開会式で意欲づけをしました。
「いよいよ本番です。他人との勝ち負けではなく、練習してきた自分との戦いです。自分のために走ることが大切です。そして、今日、たくさんの方々が応援に来てくださいました。みんなの走りを見て大人は元気になります。自分の力を出し切りましょう。皆さんでご挨拶しましょう。よろしくお願いします。」
そして、スタート前。
準備体操後、跳躍動作と肩甲骨をほぐしてから、
「全力の7割から8割くらいで走りましょう。」
と伝え、20mのダッシュを4回走りました。
その後、ゆっくり歩いて、スタート場所まで移動。
しばしの静寂。号砲が鳴り、スタートダッシュ。
黄色い小旗を振って大人が応援する中、トラックを駆け抜けていく子供。
周回を折り返すとき、すれ違う場面では、互いに刺激になったことでしょう。
応援の保護者の姿を見て、急に速くなる姿も可愛らしかったです。
ゴール前、ラストスパートでは本気の走りを見せてくれました。
遠くからの熱い応援が心に響いていたのかもしれません。
閉会式では、一人一人に完走賞を渡しました。賞状にはタイムが記入してあります。
しかし、自分が練習以上に力を出せたのかどうかがわからず、ゴールした時点では、がっかりしている子もいました。
そこで、次のように伝えました。
「今日のタイムは、みんな、練習よりも速くなったそうです。全員、自分に勝ちました。よくがんばりました。大会は1回きりです。長い人生の中で、いろんな挑戦をする場面があります。今日のがんばりを生かしてください。応援してくださった方々にお礼をいいましょう。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
子供たちが努力する場面で、価値付けをすること、自信をもたせることが私たちの仕事です。
教室に戻って練習のタイムより伸びたことや、今年の「自己ベスト」を出したことがわかり、子供たちはどんな表情を浮かべたのでしょうか。
走ることが好きになる子、挑戦することが楽しくなる子が増えてくれたらよいなと願っています。